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2009年2月27日金曜日

引っ込み思案の原因、緘黙の原因

引っ込み思案についての英語圏の研究を読んでいると、私が姉妹サイトでお話している場面緘黙症の研究動向と共通する点を見つけました。

場面緘黙症Journal
(新しいウィンドウで開く)

■ 子どもの不安という点で共通

引っ込み思案児には、不安が強くて仲間集団に入っていけないタイプの子がいます。一方、場面緘黙症は、学校など特定場面で話せないという主に子どもの症状で、不安が関係していると考えられています。つまり、子どもの不安という点で両者は共通しているのです。

■ 原因論で重なる点、重ならない点

このため、原因論で重なる点があります。それは、引っ込み思案児や場面緘黙症児の不安が強い原因の一つとして、ハーバード大学の Jerome Kagan(ジェローム・ケイガン)教授らの研究が挙げられている点です。不安の強さには生物学的起源があるとか、不安が強い子は脳の扁桃体という部位が過敏である等々です。

ところが、同じ不安の原因論なのに、重ならない点もあります。それは、親の養育態度です。引っ込み思案の研究では、親の養育態度が原因の一つとして挙げられ、実証研究もそれなりにあるのに対し、場面緘黙症の研究ではそうではないのです(もっとも、親の養育態度が場面緘黙症の原因として挙げられないのは最近の英語圏の話で、日本語圏の文献では伝統的に親の養育態度が原因の一つとして指摘されています)。

どうしてこのような違いがあるのか、私には不思議です。引っ込み思案と場面緘黙症、厳密には違う研究分野ではあるのですが…。もっと文献を読み込んでいくと、分かってくるかもしれません。

2009年2月21日土曜日

無視され続けてきた引っ込み思案の問題

アメリカ・メリーランド大学に、引っ込み思案について数多くの研究成果を発表している「子どもと家族関係研究所」(Laboratory for the Study of Child and Family Relationships)があります。同研究所の論文はネット上で無料公開されており、引っ込み思案児について勉強するのに参考になります。

今回は、それらのうち次の論文を読んだ所感を書いてみたいと思います。

Rubin, H.K., & Coplan, J.R. (2007). Paying attention to and not neglecting social withdrawal and social isolation. Merrill-Palmer Quarterly, 50(4), 506-534.

レビュー論文というのでしょうか、引っ込み思案について、英語圏における先行研究をまとめたものです。

メリーラード大学のレビュー論文はこれまでにもいくつか読んだことがあるのですが、今回の論文は、引っ込み思案研究の歴史が詳細にまとめられている点が特徴です。

引っ込み思案は、英語圏においても、研究者、理論家、親、教師の間では無視されてきた歴史があるのだそうです。引っ込み思案児は目立たない等々の理由です。

欧米では、引っ込み思案は学校不適応という点でより大きな問題ではないかと思うのですが、それでもこういう状況だったのですから、日本ではどうなのだろうと考えてしまいます。

この論文は、研究の歴史の他にも、引っ込み思案は将来どういう結果をもたらすのか、引っ込み思案の概念、原因等について簡潔にまとめられています。これは、私のような一般人にとって、引っ込み思案について勉強するための最初の取り掛かりとして重宝します。英語なので敷居が高いですが、それほど高度な英文で書かれているわけでもありません。この手の文献は日本にもなかなかないと思うので、引っ込み思案について少し詳しく知りたいという方にはおすすめです。

2009年2月17日火曜日

友達がいなかった私と、運動(スポーツ)

私は運動(スポーツ)が全くの苦手だったのですが、それはもしかすると、友達がいなかったことが原因の一つではないかと思ったことがあります。

友達がいる男の子の多くは、学校の休み時間や放課後に、仲間と一緒にボール遊び等をしていました。ところが私はそうしたところに入れてもらえず、一人で過ごすことが多かったのです。

こうして周りの男の子は、私とは対照的にどんどん体力をつけ、お互いの親睦も深めていったのでした。

男の子が運動が苦手というのは難しいものです。特に小学校あたりでは、クラスでも友達が多い、人気のある男の子は大抵スポーツができる子でしたから。

もっとも、友達がいないならいないで、スポーツの習い事に通ったり(これは親の許可がないとできませんが)、一人で体力を鍛えたりするという手もないことはありません。何でもかんでも、友達がいなかったことのせいにするのも良くありません。

* * * * * * * * * *

こんな私でしたが、これなら好き!という運動がありました。

それは、散歩です。一人で考え事にふけりながら、歩くのが好きだったのです(今でも好きです)。

散歩なら友達がいなくてもできますし、いつでも自由に気ままにできます。一人でいることが好きな私の性にも合うものでした。

それにしても、散歩が好きな男の子というのは、どういうものでしょうか。「男の子なら、サッカー、野球、etc. だろ!散歩なんて…」なのか、「別に散歩が好きな男の子がいてもいいではないか、人それぞれ」なのか。

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(05/25/2010)

2009年2月11日水曜日

親の育て方が悪いのか

何か子どもに問題があると、「親の育て方が悪いのだ」と考える人は少なくないものと思います。友達がいない子についても、親の育て方に原因があるのでしょうか。

アメリカ・メリーランド大学に、引っ込み思案児について数多くの研究成果を発表している研究所があるのですが、その名も「子どもと家族関係研究所」(Laboratory for the Study of Child and Family Relationships)ときています。やはり、引っ込み思案は、子どもと家族との関係が原因なのでしょうか。

しかし、この研究所が発行する論文を読むと、必ずしもそうとも言えないことが分かります。親の養育態度に原因を求める研究も確かにあるのですが、その一方で、近年、こうした子には生物学的・生理学的な基盤があるのではないかという研究も出てきています(Rubin ら, 2007)。

このほか、『友達ができにくい子どもたち』という本では、友達ができにくい子の一つのタイプに「自閉症、アスペルガー症候群」が挙げられていますが、これこそ先天的なもので、親の育て方に原因を求めるのは的外れです。

友達がいないなど、何か子どもに問題があっても、私は安易に親の育て方が悪いとは考えないようにしています。私は発達心理学を体系的に学習したことがないばかりか、子育ての経験すらありません。

あと、犯人探しも、ほどほどに。もし本当に親の育て方に原因があるのだとしたら、それを修正するという支援方法も考えられますが、それにしても誰が悪いとか、そうしたことをあまり考えるのは、誰のためにもなりはしないでしょう。むしろ考えるべきは、今子どものために何ができるか、です。

[文献]

◇ Rubin, K.H. & Coplan, R.J. (2007). Paying attention to and not neglecting social withdrawal and social isolation. In G. Ladd (Ed.) Appraising the Human Developmental Sciences: Essays in Honor of Merrill-Palmer Quarterly. Detroit: Wayne State University Press.

◇ 石崎朝世、一松麻実子、前田美紀、湯汲英史、林祐一(1996)『友達ができにくい子どもたち-社会性の発達と援助法』鈴木出版。

2009年2月6日金曜日

白人のような真似しやがって→友達少ない

"Acting White" という言葉があります。訳すと、「白人のような振る舞い」といったところでしょうか。アフリカ系アメリカ人などが、例えば勉強して好成績をとったりすると、白人のような真似をしているとして、冷笑の対象にされてしまうことがあるのだそうです。

この "Acting White" を含む、黒人の学業不振などに関する研究を行っている人物の一人に Roland Fryer 氏という、ハーバード大学の新進気鋭の経済学者がいます(この方もまた、アフリカ系アメリカ人です)。

Fryer 氏と Paul Torelli 氏の論文(2006)を少し読んだのですが、それによると、全米9万人の中学高校の生徒を調べたところ、成績が平均 4.0(日本で言えばオール5に相当)だった黒人は、同じ 4.0 だった白人に比べて、同じ人種の友人の数が 1.5 人少なかったのだそうです。また、黒人は学業成績がある程度上がると、生徒からの人気度が下がることが分かったそうです(ヒスパニック系は、さらにその傾向が顕著です)。やはり "Acting White" は存在するのでしょうか。

いい成績をとったら友達ができにくくなるとしたら、友達とは一体何なのだろうと思います。友達を作ることは素晴らしいという一般的な価値観にも、疑問がわいてきます。

学業が盛んでない高校に進学してそこで勉強しようとすると、相当強い意志がないと大変だという話を俗に聞いたことがあるのですが、本当でしょうか。公立の小中学にはそうした学力格差は少ないだろうとは思いますが、やはり同じ市内でも地域によって伝統的に学力レベルが微妙に高いところと、そうでないところがあるとも聞きます。

かくいう私も、高校受験に失敗して、学業がそれほど盛んでない高校に進学しました。そこでは、よく先生が「周りに流されるな」とおっしゃっていたのが印象的です。私は先生のおっしゃることを実践していたのですが、少し周りから孤立しているように思われました。ただ、私の高校の場合、勉強熱心な生徒をさげすむ傾向まではなく、私はむしろ尊敬の念をもって見られていました(尊敬されるほど偉い人間ではないのですが…)。

[文献]

◇ Fryer, G.R. & Torelli. P. (2006). An Empirical Analysis of ‘Acting White’. Retrieved February 6, 2009, from http://ws1.ad.economics.harvard.edu/faculty/fryer/files/fryer_torelli.pdf