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2010年5月17日月曜日

重松清『きみの友だち』

きみの友だち (新潮文庫)重松清の『きみの友だち』という小説を読みました。友達をテーマにした短編連作です。

おそらく中学生あたりを対象とした小説だろうと思います。それを私が手に取ったのは、以前私がお話した『児童心理』2009年11月号の中の論考「今、子どもたちにとって友だちとは何か」(著者:前川あさ美氏)の中で、この小説が引用されていることを知ったことがきっかけでした。

友達がいなかった私にとってあまり関係のない内容だろうと思いつつ読み進めたところ、最終章で、この小説の意外な意図が明らかにされています。ただ、本当に友達が全くいなくて悩んでいるような子に限って言うと、この話はあまり救いにはならないだろうと思います。物語で展開されている濃密な友人関係が羨ましく思えるだけでしょう。

■ 同調圧力

この小説のキーワードは「みんな」です。これは発達心理学で言うと、特に中学生あたりの年齢層(特に女子)によく見られる、同調圧力の強い「チャム・グループ」でしょう。前川氏指摘のとおりだと思います。

※ チャム・グループの詳細については、例えば次のサイトを参照。

例。 Benesse教育研究開発センターのページ
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私もこうした同調圧力が嫌いで、特に若い頃は、これに反発していたものです。ですが、この小説の恵美ちゃんのように、同調圧力を超えた友達ができたわけでなく、独りでいました。そしてそれで満足していたわけですから、つくづく変わっています。きみの友だち [DVD]

子どもは発達とともにこうしたチャムを卒業していくわけですが、成人してもなお同調圧力からは完全に自由になることはできません。特に日本人にとって、同調圧力は一生付き合っていかなければならないものです。

なお、『きみの友達』は映画化していて、DVDも出ています。