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2010年11月1日月曜日

「学校でできる対人関係スキル・トレーニング」

児童心理増刊 学校でできる対人関係スキル・トレーニング 2010年 10月号 [雑誌]最近は学校における子どもの対人関係力の育成に新しい動きがあるようで、学校現場でも社会的スキル訓練(社会的スキルトレーニング、ソーシャル・スキル・トレーニング、SST)が周知されるようになっているそうです。今や、学校が子どもに対人関係のスキルを教える時代に入りつつあるのです。

金子書房から出ている雑誌『児童心理』の2010年10月号臨時増刊号は「学校でできる対人関係スキル・トレーニング」と題し、子どもへの社会的スキル訓練やアサーション・トレーニング、モラル・スキル・トレーニング等を通じて、子どもの対人関係を営む力を学校場面において育むための試みについてまとめています。想定する読者層は、小学校の関係者のようです。

内容は小論集で、中には「友だちとのかかわりが苦手な子の抱える困難」「友だちの輪の中に入れない子─―デスク法」といった、このブログのテーマとも関係が深いものも含まれています。ですが、全体的には、そうした特定の子どもたちだけではなく、この頃低下しつつある子どもたち全般の対人関係スキルを向上させる必要があるという問題意識から今回の特集が組まれた様子がうかがえます。

対人関係がうまくいかないのはスキルが足りないからであって、そのスキルは訓練によって獲得が可能という、ソーシャルスキル・トレーニングの基本的な考え方は、私には面白く感じます。対人関係がうまくいかないのを「性格のせい」と考えると、性格を変えないといけないのかというややこしい話になってしまいます。

学校教育で、子供の対人関係力の育成を考えるには、ここで取り上げられているトレーニングは、賛否はともあれ知っておくべきかもしれません。

[関連記事]

◇ 社会的スキル訓練

2010年10月13日水曜日

「友達と遊べない」という相談

市町村は、児童及び妊産婦の福祉に関し、家庭その他からの相談に応じることとされています(児童福祉法第10条第3項)。

市町村が応じる具体的な相談の種類は「市町村児童家庭相談援助指針」で定められているのですが、この中には「友達と遊べない」という項目が含まれています。

↓ 厚生労働省HPへのリンクです。

「市町村児童家庭相談援助指針について」別添3をご覧ください。
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相談の種類は、養護相談、保健相談、障害相談、非行相談、育成相談に大きく分けられるのですが、そのうち育成相談の中の、性格行動相談の一つに、「友達と遊べない」が挙げられています。

また、児童相談所の運営指針にも同様の記載があります。

↓ 厚生労働省HPへのリンクです。

「児童相談所の運営指針について:図表」表-2をご覧ください。
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私はこのあたりのところはよく分からないのですが、おそらく幼児や低学年児童を主な対象として念頭に置いた相談ではないかと思います。友達と遊べないということが問題になることが多いのは、私の知る限り、だいたいこのぐらいの年齢だからです。

友達と遊べないことの背景には、様々な問題が考えられます。場合によっては、発達障害の可能性もあります。友達と遊べないこと自体が、子どもの「問題行動」「行動問題」ともされます。

とにかく、厚生労働省の指針により、市町村や児童相談所は友達と遊べない子についての相談を受け付けることとされているというお話でした。

[関連記事]

◇ 市町村児童家庭相談援助指針、児童相談所運営指針に緘黙が場面緘黙症Journal ブログ
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2010年8月4日水曜日

小中時代の友人関係と、ひきこもり

先日、内閣府が「若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)」を発表、推計70万人のひきこもり者がいるなどその概要は各種メディアで報じられ、インターネット上でも話題になりました。

調査は、全国の市区町村に居住する満15歳から満39歳の者5,000人を対象に、平成22年2月18日~2月28日にかけて行われました。アンケート調査です。

この調査には、友人関係に関する質問項目もありました。以下は、そのうち一部です。

* * * * * * * * * *

Q11「あなたは小学校や中学校の頃に、学校で次のようなことを経験したことがありますか。あてはまるものすべてに○をつけてください。(○はいくつでも)」

* 一部抜粋 *

<友達とよく話した>
ひきこもり群:52.5%
ひきこもり親和群:70.2%
一般群:85.2%

<親友がいた>
ひきこもり群:45.8%
ひきこもり親和群:62.6%
一般群:71.9%

* * * * * * * * * *

これを見る限り、ひきこもり群は、小学校や中学校の頃、友人関係が希薄な生活を送っていた者の割合が比較的多いことが読み取れます。

ただ、一般群でも、友人関係が希薄だった者はある程度います。小中学校時代に希薄な人間関係を送っていたからといって、そうした人がみな後にひきこもりになったとまでは、さすがに言えません。

また、この調査結果は、友人関係が希薄だったからひきこもりになったとか、そうした因果関係を示したものではありません。

友達がいないとか、友人関係が希薄だとか、そうした青少年時代を送った人に関する調査結果を見ると、どうもこのようなあまり明るい材料とは言えないものが私が見たところ多いです。残念です。

なお、私も小中学校の頃、友達とはあまり(時期によっては全く)話をしませんでしたし、親友は一人もいませんでした。そもそも、友達がいない時期が長かったです。調査には、友達がいたかどうかの質問項目はありませんでしたが、もしその質問があれば、どういう結果になっていたのでしょうか。

2010年5月17日月曜日

重松清『きみの友だち』

きみの友だち (新潮文庫)重松清の『きみの友だち』という小説を読みました。友達をテーマにした短編連作です。

おそらく中学生あたりを対象とした小説だろうと思います。それを私が手に取ったのは、以前私がお話した『児童心理』2009年11月号の中の論考「今、子どもたちにとって友だちとは何か」(著者:前川あさ美氏)の中で、この小説が引用されていることを知ったことがきっかけでした。

友達がいなかった私にとってあまり関係のない内容だろうと思いつつ読み進めたところ、最終章で、この小説の意外な意図が明らかにされています。ただ、本当に友達が全くいなくて悩んでいるような子に限って言うと、この話はあまり救いにはならないだろうと思います。物語で展開されている濃密な友人関係が羨ましく思えるだけでしょう。

■ 同調圧力

この小説のキーワードは「みんな」です。これは発達心理学で言うと、特に中学生あたりの年齢層(特に女子)によく見られる、同調圧力の強い「チャム・グループ」でしょう。前川氏指摘のとおりだと思います。

※ チャム・グループの詳細については、例えば次のサイトを参照。

例。 Benesse教育研究開発センターのページ
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私もこうした同調圧力が嫌いで、特に若い頃は、これに反発していたものです。ですが、この小説の恵美ちゃんのように、同調圧力を超えた友達ができたわけでなく、独りでいました。そしてそれで満足していたわけですから、つくづく変わっています。きみの友だち [DVD]

子どもは発達とともにこうしたチャムを卒業していくわけですが、成人してもなお同調圧力からは完全に自由になることはできません。特に日本人にとって、同調圧力は一生付き合っていかなければならないものです。

なお、『きみの友達』は映画化していて、DVDも出ています。

2010年4月8日木曜日

『論語』に見る友人

論語 (岩波文庫)「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」など、『論語』には友人についても記述があります。今回は、『論語』に見る友人について取り上げてみます。

○ 子曰、徳不孤、必有隣、(子の曰く、徳は孤ならず。必ず隣あり。)

徳のある者は、決して孤立することはない。必ず親しい友人ができる……といったところでしょうか。とすると、友達がいない子は、徳がないということなのでしょうか。子どもの場合、同年代の子よりも大人びて、妙に人徳があると、かえって孤立してしまうのではないかと私などは思います。

○ 曾子曰、君子以文曾友、(曾子の曰く、君子は文を以て友を会し、友を以て仁を輔く。)

君子は詩書礼楽を通じて友人を集め、友人を通じて仁の成長を助ける……といったところでしょうか。いいですねえ。ただ馴れ合うだけの友人関係ではなく、こうしたお互いを高めあう友人関係を築くことができれば理想的です。

○ 孔子曰、益者三友、損者三友、友直、友諒、友多聞、益矣、友便辟、友善柔、友便佞、損矣、(孔子の曰わく、益者三友、損者三友。直きを友とし、諒を友とし、多聞を友とするは、益なり。便辟を友とし、善柔を友とし、便佞を友とするは損なり。)

「益者三友、損者三友」のことわざでも知られます。有益な友人は、正直な人、誠実な人、博識な人。有害な友人は、体裁ぶった人、こびへつらう人、口先上手な人。友人は選びたいものです。

[参考にした文献]

◇ 金谷治訳注『論語』、岩波文庫、1999年。

2010年3月11日木曜日

同調圧力を感じなかった

友達がいなかった中学~高校生の頃の私は、単独行動派でした。周りの同級生たちが揃って同じ行動をしていても、私だけ全く違う行動をとるなどしていました。

例えば、周りの掃除当番がみな掃除をさぼっていても、私一人だけが掃除をしていました。周りの男子生徒がみな詰襟(学ラン)のホックを外していても、私一人だけがホックを留めていました。周りのほとんどが学生カバンをつぶして平らにしていても、私はそのようなことはしませんでした。

もしかすると、周囲の生徒には「同調圧力」が強かったのではないかとも思います。友達がみなやっているから、他の人もやっているから、自分もやらないわけにはいけないということです。そうした同調圧力が、学校のきまりを守らなければならないという規範意識よりも強かったのでしょうか。もちろん、純粋に掃除をさぼりたい、詰襟のホックを外したい、学生カバンをつぶしたいという欲求もあったのでしょうが。

一方、私などは、同調圧力はほとんど感じず、学校のきまりを守るべしという規範意識の方をずっと強く感じていたのでしょう。

* * * * * * * * * *

仲間関係の3つの発達段階というものがよく知られています。(1)ギャング・グループ、(2)チャム・グループ、(3)ピア・グループです。これらの詳細については、私はうまい説明ができないので、他サイトを参照。

例。 Benesse教育研究開発センターのページ
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高校生ぐらいならまだしも、中学生ぐらいまでなら、同じ行動を重視するチャム・グループが中心で、同調圧力は強そうに思えます。それだけに、私の場合は不思議です。友達や仲間がいなかったから、同調圧力を感じることもなかったということなのでしょうか。

2010年3月7日日曜日

『児童心理』2009年11月号「友達ができない子」

少し遅れた話題で恐縮ですが、金子書房から出ている『児童心理』という雑誌の2009年11月号が、「友達ができない子」という特集を組んでいます。過去の号ですが、注文により購入は可能です(もちろん、在庫切れでなければですが)。また、一部の書店ではバックナンバーが置いてあります。

全144ページ中100ページほどが友達についての特集で、様々な論考や事例、エッセイなどから構成されています。その目次は、金子書房ウェブサイトで見ることができます。やや専門的で堅めの内容ですが、学術論文ほどではなく、特別な専門知識がない方でも読むことができるだろうと思います。現に、私でも読めました。

主に小学校の教師を対象としたと見られる内容ですが、親向けの内容もあるなど、保護者が読んでも得るところがあるだろうと思います。友達がいない当事者向けの内容ではありませんが、小学生ぐらいの時に友達がいなかった人が、過去を振り返るために読むという読み方はあるかもしれません。

読んだ感想ですが、やはり専門家が書いてあるだけあって(このブログとは違い)内容がしっかりしていて、大変勉強になりました。学んだことを、今後このブログに生かしていきたいです。

私が常々疑問に思っている「友達がいないことは悪いことか」という問いについては、これを読んでもなお答えが見出せませんでした。教育関係者は友達がいない子を問題視するけれども、その教育関係者の間でも、どこか迷いもあるのかもしれないと、むしろ感じました。

2010年2月27日土曜日

「親友と呼べる人いますか」

今朝(2010年2月27日)の『日本経済新聞』付録の『日経プラスワン』、第1面の特集が「親友と呼べる人いますか」でした。インターネットによる親友についてのアンケート調査が掲載されていました。

その中でも興味深かったのは、「(親友に)いつ出会った?」という質問に対する回答です。

 0~9歳 125
10~19歳 551
20~29歳 304
30~39歳 110
40~49歳  60


※ 複数回答可

ご覧のとおり、10~19歳が約6割で最も多く、相手は学校の同級生が圧倒的だったのだそうです。ただし、40代以上では、職場の同僚や仕事を通じて知り合ったという人が約5割を占めたそうです。

このことから、親友を作るうえで10代の時の学校での出会いが、いかに大きいかが分かります。もちろん、20代以降も親友を作るチャンスはあるのかもしれませんが、10代の頃の出会いが大きいことには違いありません。

一方で、0~9歳という回答は少数でした。保育園や幼稚園、小学校低学年の時点で親友ができなくても、長い目で見れば、その後に親友ができるチャンスは十分あるのかもしれません。

このブログでは、友達ができない子全般について、主に幼稚園児や小学生を中心に、中学校やそれ以降の学年の子も視野に入れてお話ししています。在学中に友達がいないということは一つのテーマになり得るということを、今回のアンケート結果で改めて感じました。

ただし、上の調査は、調査方法があまり明らかにされていないので(調査対象者の年齢層、性別……など)、留保も必要です。

なお、私には親友と呼べる人はいません。今に限らず、私のこれまでの人生の中で、親友と呼べる人は誰一人いませんでした。別に欲しいとも思いません。

2010年1月29日金曜日

ニートには、高校時代友達がいなかった人がわりと多い

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく (幻冬舎文庫)ニートには、高校在学中に仲の良い友達が「多くいた」割合は失業者に比べて低く、特に「いなかった」割合が3倍近く多い--

玄田有史、曲沼美恵『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』幻冬舎、2004年、46-47ページに、書かれています。このもとの資料は、厚生労働省がUFJ総合研究所に委託して行った2003年の調査「若年者のキャリア支援に係る調査研究」です。つまり孫引きになります。すみません。

[高校時代の仲のよい友達]

多くいた………失業者:25.3%、ニート:16.2%
少しいた………失業者:67.1%、ニート:64.7%
いなかった……失業者: 7.6%、ニート:19.2%


※ 高校に通っていない場合には、中学時代の状況

ただし、これは、高校時代に友達がいないとニートになるということを意味するわけではありません。また、失業者、ニート以外の若年者が高校時代にどの程度友達がいたかについては、ここからは分かりません。

* * * * * * * * * *

このブログは、高校生よりも、もう少し下の年齢層の友達がいない子が話題の中心です。ただ、高校時代に友達がいなかった人は、保育園~中学時代はどうだったのだろうかと私などは考えてしまいます。高校時代に友達がいなかったからといって、保育園~中学時代にもいなかったかというと、必ずしもそうとは限りません。ですが、保育園~中学時代にもそうだったかもしれませんし、何らかの芽があった可能性もあります。

石崎朝世『友達ができにくい子どもたち』すずき出版、1996年では、(保育園で)友達ができにくい子を7つのタイプに分けています。(1)「ひとり遊びが好き」タイプ(2)「ひっこみ思案」タイプ(3)「ちょっとわがまま、ちょっと乱暴」タイプ(4)「落ち着きがない=多動」タイプ(5)「動きがゆっくり=寡動」タイプ(6)「発達に遅れがある」タイプ(7)「自閉症、アスペルガー症候群」タイプ。

このうち(1)と(2)のタイプは保育園の頃に友達がいなくても大丈夫とのことで、(3)~(5)についても、症状が著しい場合でない限り、適切な対応は必要ないとのことです(24-38ページ)。すると、(6)(7)タイプと、(3)~(5)タイプの一部の子たちは、保育園の頃に友達がいないと、適切な対応がとられない場合、高校時代あたりに入っても依然として友達がいない恐れがあると見ていいのでしょうか(大雑把ですが)。

この(3)~(7)タイプは、発達障害の可能性が考えられます。実は、ニートの若者には発達障害の診断を受けた者や、その疑いがある者の割合が少なくないという報告が、ニート支援機関「地域若者サポートステーション」等からあがっています。

あと、これは私見ですが、上述書『友達ができなくい子どもたち』で今は友達がいなくても大丈夫とされた(2)「ひっこみ思案」タイプについても、もしこうした子が幼児期の不安障害にかかっている場合、それが青年期にも続く可能性があるというのが最近の研究で明らかになっていたものと私は理解しています(姉妹ブログ・ニートひきこもりJournal大人の不安障害、うつの大部分は、子供の頃に根が」参照)。「ひっこみ思案」タイプについても、放置しておくと青年期まで続き、高校時代あたりでもなお友達がいないということにならないとも限らないのではないかと私などは思います。